粉雪

自転車の前かごの中に桜の花びらが溜まっていて、
自転車が動くたびに風に乗って飛ばされる。


そしてピンクの花びらは、
風になびくあたしのモカ色の髪に
優しく絡んで消えてゆく。



自転車に乗りながら桜に包まれた学校の通り道にある公園に目をやる。



その小さい公園には、大きな桜の木があって

子供なんかいない、ちっぽけな公園なんだけど

あたしはこの公園が一番好き。


子供の頃から大好きなあの公園。


ふと桜の木の根元を見ると...





男の子が根元に寄りかかって
本を読んでいる。



男の子って言っても、あたしと同じくらいの年かな。


遠くから見ただけだったけど

その光景は綺麗だった。


ゆっくりと舞う桜の花びらに

包み込まれた色白の少年。

栗色のふわふわした髪が風に揺らされ美しくなびく。


顔は俯いていたからわからない。



気付いたら自転車から降りていて、
その少年を立ち止まって見つめていた。



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