君が君を好きになって。
菜束は椅子を引いて座った。
「…今日も、美術室で絵描いてて。何か…描いた作品を出されるとかじゃなくて、その為に描くって考えたら…緊張しちゃって」
「え、じゃあ絵、今美術室に沢山あるってこと?」
「う…うん」
「見に行っていい?」
「え、でもそんな大したものじゃ」
「見ないと判らないよ?」
菜束はドキドキしながら頷いた。
「へぇ…やっぱ絶対違う」
「そう、かな?」
「うん───…あ、何かこれ好きかも」
「それ、あの曲を脳内再生しながら描いたから、かも知れない…です」
「そうなの?へぇ…」
「あ、良かったら、どうぞ。そんなに大きく無いし、ピアノのお礼です」
白羽は絵から目を離して菜束を見ると、嬉しそうに笑った。
「有難う。…そういえば小玲身長いくつある?」
「え?私?162cm…が4月」
「あ、だよね。あお…綿貫159cmだから気にしてた。ま、昔から気にしてはいたけど」
「私より小さいんだ…。知らなかった」
「小玲、何線?」
「半蔵門線、だけど」
「すぐ帰るんじゃなかったらあおの部活見に行って三人で帰ろう?一人じゃ寂しいでしょ」