君が君を好きになって。
「勉強教える位だったら俺出来るし、良いよ」
「本当?有難う」
「いえいえ、俺で良ければ」
それからは特に会話が無く、碧は立ったまま熟睡、一応右肩で碧を支えて左手に持った本を読む白羽。
ガタン、ガタン。
電車独特の揺れ。
菜束はそれを確かめながら風景を見つめて色や配置、を考えていた。
「何考えてるの?今」
「えっ、今?えっとね、冬なら、地下から上がった時の空から色が移り変わる早さっていうのが判るのに…って判りにくいよね…」
「ううん、判るよ?降りた時に空の色が全然違うって話でしょ?」
「そう。綺麗だから」
「───優しい人って目してたから、少し聞きたくなったんだ。考え事の邪魔だと思ったけど」
「そんなことないよ…」
『まもなく、北千住です。お降りのお客様は…』
「…とか言ってる間に着いちゃったね。…あお、北千住」
白羽は支えていた右肩で碧を容赦なく小突いた。
「寝てた…。これ一人だったら100%久喜行ってたわ」
「良かったねぇ。…じゃあ小玲、気を付けて」
「そちらこそ」
「じゃあ次、火曜日だよね。バイバイ」
「うん」