君が君を好きになって。


いつも菜束が座っている席の周りには、もう二人の友人たちが座っていた。

「暑いね、小玲ちゃん」

「うん…本当」

「あ、知ってた?今年から公立の小中にも冷房がはいってるって」

「えーっ、何で?私ら我慢して来たじゃん!」

「ほら近頃温暖化激しいから」

「尚更ー」

「えー、小玲ちゃん悔しいよー」

野々内由佳。
内面もおよそ子供っぽいが、身長も菜束より15cm低い147cm。

「絵ー描きに来た筈なんだけどね。いっつも雑談になっちゃってさ」

佐々木蛍。
赤い眼鏡がチャームポイントの委員長タイプ。

少なくとも菜束はそんな風に思ったことはない。
二人共クラスは違えども仲良くしてくれるいい友人だった。

「じゃじゃーんっ、今日の資料ー」

「わ、凄いじゃん!背景カタログ学校編?へぇー」

「漫画描きさんコーナーに行ったらあったの!たまには行くものだよねっ」

「あ、あそこねぇー…なっか?どしたの」

「私資料何処かやっちゃったみたい…。探してくるね」

「達者で」

確か休み時間に、資料の背景の楽器の名前を調べる為に音楽室に持っていったきり。

「第二音楽室かな」

美術室は三階、音楽室は四階。

「えー…階段昇るの…?」

これが私立女子中学生。

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