君が君を好きになって。
「本当に偉そうなこと言った…」
菜束は閉じた携帯を握り締めた。
家族の中で、夏実とコミュニケーションを取っているのは今菜束しかいないのだから。
「少し出かけてきます」
「手ぶらで?」
「…散歩」
「気を付けてね」
夏実からの返信は無かった。
特に行く当てもなく、ふらふらと歩いて、足が疲れたらベンチに座って、暑かったらお店に入った。
そういえば、夏実の誕生日は7/28だったと思い出す。
「…帰ってくるといいな」
誰かに相談したいと、菜束は心から思った。
一応と思って持ってきた携帯が鳴りだす。
「非通知…」
夏実かもしれない。
メールではなく電話ということは、緊急かもしれない。
「もしもし、お姉ちゃん…!?」
『いえ…小玲お姉さん居たの?』
「わ…、綿貫…──?」