君が君を好きになって。

「いや…まさか小玲歩いてくると思わなかった。だって西新井でしょ?」

「ずっとフラフラしてたから近くに居て…私も荒川渡るなんて思わなかったよ」

「確かに…」

ずらりと並ぶ本棚。
静かで静かで、静かなその環境は、菜束にとってとても嬉しいものだった。

「何か美術のこと?」

「!うん、そう!…勘が良いよなぁ」

「他の事だったら芹沢君呼ぶと思ったから」

「そっか」

「で、私は何を…」

「?文化祭。二人じゃん?相談しようと思って」

「二人?何でだっけ」

確か菜束の班は四人いた筈だが。

「あの二人は打ち合わせとかに出る役やるって言ってたから、二人。って彼らは言ってたよ?あ、潮凪と朝霞でしょ?」

「あ、そうなんだ?じゃあどうしようか。資料借りなきゃいけないんだもんね?了解です」


「じゃあ俺適当に資料持ってくるから、小玲そこで待ってて!」

「うん」



菜束は手頃な位置にあった机に椅子を二つ持っていき、その一つに座る。
左側の雑誌コーナーを見つめて、夏実のことを菜緒子に言うべきか否かをひたすらに考えていた。

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