君が君を好きになって。
夏実は今、何処で何をしているのだろうか。
「心配してるのに…」
ドン
沢山の資料が菜束の視線の先に置かれる。
「誰を?お姉ちゃん?」
「あ、ううん!資料いいのあった?」
碧は首を振った。
「俺じゃよく判らなかったんだ、け、ど。とりあえず適当に持ってきただけ」
「うん。──…私明るいやつがいいなぁ。これとか」
「あ、判る。あと、これとか」
「ね。意見が合いますね」
碧は顔をふと上げてから、笑って頷いた。
──私もこんな風に、感情通り笑えたら。
表情が出にくいタイプの菜束は、羨ましく憧れた。
「いいな」
「えっ?」
「あ、ええと…いつも笑顔」
「えー?嘘とか吐けないよ?」
「綿貫も嘘吐きたいなんて思ったりするの?」
碧は菜束の言葉を聞いた途端突っ伏して体を震わせた。
上げた顔は笑っている。
「ちょっと待って俺どんなイメージなの!?」
「え…馬鹿正直みたいな」
「まっさか」
「え…そうなんだ」
碧は手元を見つめた。
「俺だって誰かに嫉妬したり、誰かを傷付けたりするよ。…勿論嘘だって、性格的にやっぱ無理なんだけど、…そりゃあ、ある」