君が君を好きになって。
「私…大変だって判ったのに、お母さんに言わなかった。嘘吐いたの。お姉ちゃんに会わなかったなんて、嘘吐いたの…っ」
碧が近くに来たらしく、気配が近付いた。
「小玲は…何で嘘を吐いたの?」
菜束は顔を上げて碧の顔を真っ正面から見上げた。
少し怯んだ碧の芝生に置かれた手が動く。
「私は…」
「…」
碧が頷いた。
「私はお姉ちゃんのことが大嫌いだから…!」
誰にも、言ったことのないこと。
本人にだって、言ってない。
自分を無下に扱う夏実が、姉が、
菜束は昔から大嫌いだった。