君が君を好きになって。
碧は手を振って自転車を漕いで行った。
「ただいまー」
「菜束も葉太も帰ったの?おかえり」
「母さん母さん!姉ちゃんの友達格好良い人だった!」
「あら。友達と遊んでたの?菜束」
詳しく話す気は無かった菜束は、適当に事実を割愛した。
「…たまたま会って、話してただけ」
「格好良いって葉太…男の子?」
「うん。そだよ。彼氏じゃないってさ。優しそうな人だったけど」
菜緒子は不思議そうに頷いた。
「もうすぐご飯だから、手洗ってねー」
菜束は、心が軽くなったのが分かった。
悲しくて切なくて、辛かった思いが。
拒絶されなくてよかった。
「──良かったぁ…」