君が君を好きになって。

菜束は口が半開きになったまま固まっていた。

碧を見つけたはいいが、女子といたために入れず少し観察をしていた、ところまではよかったが。

仮にも男である碧が女の子に押し倒され、碧がその女の子を平手打ち、あげく二人はキスまでしていたのだから。



「え…ええ?」

女の子がこちらに気付く。

「あ、“小玲さん”」

「!」

起き上がろうとした碧の顎を女の子が押さえた。

──また凄いところを…。顎って。

女の子かこちらに近付いてくる。
菜束の持つ漫画に気が付いたようで、口許で笑った。

「私は一条千幸。宜しくねぇ、小玲さん」

「は…はぁ」

「その主人公、最後に殺されちゃうんだってね」

それだけ言い残して千幸は去って行った。

「ね…ネタバレ…!」

菜束は精神的にショックを受けつつ碧の側にしゃがみこんだ。

「…綿貫?あ、別に見たくて見たわけでは…」

「──…うん、…うん」

碧は仰向けのまま、頭をガン、とアスファルトにぶつけた。

「い、痛…そうだよ」

「痛かった。あー…」

「…因みに今のはお初では…?」

「あーううん、違う違う。初じゃないよ」

少しずれた意味でショック。

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