君が君を好きになって。
「姉ちゃーん、入るよ」
「あぁ、はい」
菜束の顔を見て葉太が眉を潜める。
「…顔赤いよ」
「気のせいだって」
「いや。顔赤い」
「…まぁいいや」
「あれでしょ、綿貫とかいう人。あの人と何かあったんでしょ!」
菜束が葉太の問に慌てて答える。
「綿貫とは何もない!綿貫に何かあっただけで」
葉太が企み顔を作った。
「好きなんだぁ?」
「……──」
菜束が面食らっていると葉太は部屋から出て行こうとした。
「姉ちゃんってウブいんだね。知らなかった!」
「ちょ…葉太!」
「知らねーっ」
バタン!
ドアが葉太の思うままに閉まり、菜束は気力も無くまたへたりこんだ。
「弟にまで見透かされてしまうとは…」
と言って菜束はハッとした。
「いやだから何を見透かされたんだって。やだなぁ私は…」
菜束は意外と変人、なのやも知れない。