君が君を好きになって。
地下から地上に上がった瞬間、菜束は眩しくて目を閉じた。
夕陽。
「凄…」
電車の中に溢れるばかりのオレンジの光。
でも天上は白っぽい青。
地平線なんて見られないけれど、見えたらきっと綺麗なんだろう。
「こんな夕陽珍しい…な、小玲」
「うん」
また菜束は外を見る碧の横顔を見ると、夕陽のせいで輝いて見えた。
──自分もそうなんだろうけど。
菜束の視線に気が付いた碧は菜束から目をそらして笑った。
「お姉さん、帰ってくるといいな」
「──…何か微妙に複雑な気持ち」
「自分を心配させるお姉さんのことも嫌いなんでしょ?なら嫌いが一つ減るじゃん」
菜束はかなりその言葉を考えた。
奸悪といい、今の言葉といい、難しい言葉を碧は沢山使う。
菜束はそんなところも透明だと思うことにして、
一歩だけ碧に近付いて窓からの景色を眺めることにした。
「あ、そうそう。5日にバスケ試合あるんだけど、来る?」
「え。いいの?」
「全然。俺いまいち出るか微妙だけど」
「うん、行くね」
「ウチの体育館で9:00からだから、来れたら」