君が君を好きになって。
「何かまた来たし…」
「小玲、続けて」
碧はかなり怒り心頭のようだった。
「…──お姉ちゃんが居なくなったら…私の大好きなお母さんや葉太が悲しむ!お姉ちゃんを愛してくれてる人が傷付く!」
「──だから何だよ」
「でも貴方なんかに人の幸せを左右する資格は無いの!…だから返して
お姉ちゃんを返して!」
彼氏は苛立ちを夏実にまたぶつけた。
「菜束、良いから逃げな」
夏実がようやっと菜束と目を合わせた。
「そうそう、何も分からない処女ちゃんはそこの童貞君と遊んでろ!」
「成程。それがメインのお付き合いなら尚更、放しづらい訳だ、お兄さん」
夏実の彼氏は碧に少し怯んだみたいだった。
碧は恐れもせずこちらに歩を進めている。
「…“彼女”だぞ?それくらい当たり前なんだよ。最近の高校生は」
「──…一つ、訂正が、お兄さん。俺は童貞じゃ無いよ。ご期待に添えず失礼」
笑ったその顔は、いつも通りの笑顔だった。
「えぇ…?」
全員が一応唖然としたところで、
夏実の彼氏はナイフを出した。