君が君を好きになって。
「…別に、最初から人殺すつもりだったし」
碧を睨みつけてから、夏実の彼氏はいきなり菜束に襲いかかった。
「小玲!」
「──い…やっ」
菜束はナイフから逃れる為に力を込めた。
碧が走り寄って、夏実の彼氏の膝裏を蹴り、
彼が膝を折るように崩れた。
そこから碧は菜束の腕を引っ張る。
「小玲、警察呼んで」
小声でそう言うと、菜束に自分の携帯を手渡す。
菜束は頷いて、110…警察を呼ぶ為にボタンを押して、コール中に走ってその場から逃げた。
「全部お前のせいだろうが…!」
彼は夏実にナイフを突きつけた。
「ごめ…、なさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「何で…」
夏実が謝るのだ。
碧は力の抜けた彼の手からナイフを抜き取ろうとした。
その時。
グサ。
肉を、引き裂くような音が響いた。