君が君を好きになって。
「葉太、帰ってる?」
部屋をノックすると、ドアが開いて、
髪がくしゃくしゃの葉太が現れた。
「うん…寝てた。何?どうしたの?」
「ご飯食べよ。話すから」
菜束は一切の嘘は無しで真実を語った。
葉太は困ったように眉をひそめ、何とも言えない表情をしていたが、思いきったような顔をすると菜束を見上げる。
「まぁ、あれでしょ。それは嘘って言わないと思うよ。それに姉ちゃん俺にもう本当のこと言ったみたいだし」
「…うん」
「ね。食べよ食べよ。子供は明るく行くのが売りなんだから!」
葉太の言葉に菜束も笑った。
そうなんだ。
──私たちはまだ子供なんだ。
だからきっと、大丈夫。
「そうだね。頂きまーす」
二人は手を合わせた。
ガチャ。
鍵を回すと、玄関の電気が付いた。
「只今」
返事の無い筈の挨拶を小さく溢す。
─────綿貫 翠
桜乃
碧
カララ…
トン。
「!」
無い筈の物音に、嫌な予感に、碧は足が地面に張り付いたように動けなくなった。