君が君を好きになって。
8/4。
菜緒子は朝から出掛けてしまった。
病院にも行く、と言って。
じゃあ何処に行くのだとは思うのだが、昨日の今日とでもいうか…ではあるし、何も言わず菜束は菜緒子を見送った。
「俺、塾。じゃあね」
「行ってらっしゃい」
振った手を下ろして、溜め息を吐くと菜束は静かにドアを閉め、部屋の電気を付け直した。
「あ、明日…綿貫の試合?」
──無理しないでいい。
碧はそう菜束に言った。
行きたいのは山々なのだが、夏実と話をしなければ。そう思う。
「別にもう良いんだけどね」
良くない。
ちゃんと菜束には判っている。
「どうしよう…」
菜束はやはり疲れていて、ベッドで目を瞑れば眠気に負けてしまった。