君が君を好きになって。
サイレントプリンス
次の日。
「お母さん出掛けるの?」
「ん?うん。行ってくるね」
「あ、あのね…!」
菜束はパジャマのすそを握り締めた。
「友達の試合見に行ってもいいかな。…学校に」
菜緒子は少し驚いた顔をしたあと、ゆっくり笑った。
「行ってらっしゃい。気を付けてね?」
そして菜束に背を向けて、扉の向こうに消えて行った。
「…やったぁ」
菜束は嬉しくて気が抜けてその場に座り込んだ。
「綿、貫、君っ」
「うーわ。何なに?」
「今日何でお前ベンチな訳?おかしくね?」
碧は笑って首を振った。
「いーの。俺まだ新入だし」
「…ま、すぐ交代させられそうだけどな!お前居なきゃ負けるし!」
「頑張れよ!」
叩かれた背中を擦りながら碧はブイサインをした。