君が君を好きになって。
永遠と思えた音が止んで、ピアノを弾いていた少年がこちらを不思議そうに見つめた。
菜束は何を言ったら良いものか判らず困っていると、恩人の少年が笑顔でピアノに近付いた。
「落とし物を俺が拾ったんだけど、ここの前で会って。で、しろのこと見てたから入れちゃった」
「へぇ…あ、どうも。芹沢です」
「あっ、小玲です。ごめんなさい、お邪魔しちゃって」
「全然無いって。因みに俺綿貫っていいます」
菜束は二回頷いてから、時間の存在を思い出した。
4:36。
20分以上部活から抜けている。
「あ、えと…部活、戻ります。資料ありがとう。…綿貫君」
菜束は扉の前で小さく手を振る透明少年…──綿貫に軽くお辞儀をして静かに出ていった。
「あの子俺より大きかったかな…?」
「160はあったと思うけど」
「うわー、やっぱ159って小さいな」
「小さいよ」
「どうしたら伸びるの?背」
「足とか引っ張ろうか」
「それはちょっと…ねぇ」