君が君を好きになって。
「…今日は俺は休みだよ」
「お願いします」
「…え」
「お願いします…、試合に出て下さい。お願いします!」
何度も何度も頭を下げて、マネージャーは碧を説得しようとした。
「──…」
碧はコートを少しの間迷うように見た。
「碧」
珍しく白羽が碧を名前で呼ぶ。
「…俺は構わない」
「碧。判ってる?」
「───出るだけでいいね?」
んな無茶な。
コートに立ったからにはそれは絶対的に不可能だ。
だがマネージャーは大きく頷いた。
「しろ。出るだけでいいってさ。行ってくる」
碧は鞄から畳まれたユニフォームを取り出した。
白羽は呆れたように笑って目をそらした。
「知らないから」
「まさか。そんな薄情者だったっけ?」
碧が笑う。
白羽は図星らしく、また目をそらした。
「頑張って」
「うん」
二人は両手を軽く合わせる。
「じゃ小玲、行ってきます」
「うん」
──あぁ、何か言わなきゃ。
碧は菜束に背中を向けてしまう。
「綿貫!」
碧が振り向く。
「見てるから!」
碧は笑わずに、口をしっかり閉じて頷いた。
嬉しそうに。