君が君を好きになって。
試合は圧勝、相手は不可解そうに惨敗。
誰もが碧を取り囲んで、背中を叩いたり、手を合わせたりしている。
そんな光景を菜束は歓声の中見つめていた。
人々に取り囲まれて、笑っていた碧は、
その中から真っ直ぐに菜束の方を見た。
──見てたよ。
碧はブイサインと一緒に、
今までで一番の笑顔を見せた。
それが果たして本当に菜束に向けたものなのか、
そんなことはよく判らなかったけれど、
でも菜束はそんな笑顔を見られて幸せだった。
碧は、世界の誰よりも輝いている。
そう思った。
──もう誰にも見せないで。
なんて心の隅で欲張りながら。