君が君を好きになって。
「芹沢君」
「ん?」
「私、綿貫のこと好きみたい!」
菜束は笑顔で白羽に明かすと、体育館の外へと向かった。
暑い。熱い。
こんなに顔がほてったのは初めてかも知れない、と菜束は顔の筋肉を緩めた。
「やっと認めてるし」
白羽は誰に向けてでもない笑いを隠した。
──頑張れ。
素直に、菜束を応援するから。と。
「小玲?」
「綿貫」
菜束は座っていた階段から立ち上がって碧の近くへと寄った。
「おめでとう」
「─…有難う」
碧は照れ臭そうに笑って、軽く頭を下げた。
「格好良かったよ」
菜束は自分で口に出して、恥ずかしさに笑っていた。
「…あ────。下手こかなくて良かった!小玲に合わす顔無いもんなぁ」
「別に、綿貫は綿貫だって」
「格好悪くても?」
「うん」
当然だと菜束は頷いた。
碧は心から嬉しそうに笑っていた。
菜束の言葉で。