君が君を好きになって。
「小玲?変な漢字。嫌じゃない?」
「…私には選べないし。どうせ私これ名字変わったやつだし」
「えー、何て名前だったの?」
普通の男はここで可哀想だとか抜かすのだが、彼は違っていた。
「…濱音」
「いい名前だったんじゃん!嫌だ嫌だ、大人なんて。ね」
夏実はもう、そこで好きになっていたんだと思う。
大人を否定する存在。
それが夏実たちを繋いでいたと信じていた。
乱暴な人だった。
言葉の暴力、
身体的暴力。
でも夏実は、彼なりに愛してくれていると思っていた。
馬鹿だなぁと今では思うが。