君が君を好きになって。
二人して思いのままに泣きじゃくると、妙に気分がすっきりした。
そんな清々しい空気の中、軽やかに夏実は口を開いた。
「あの男の子。彼氏?」
「…わ、綿貫?違うよ。友達」
「えー?本当?」
「本当だってば。…私が好きなだけ」
夏実は痒いと言って布団に潜ってしまった。
そこで、ノック音が響く。
「はーい」
菜束が扉を開けると、菜緒子と、
知らない男の人が立っていた。
「…こんにち、は」
「隆、…この子が菜束」
「あぁ…今日は。濱音隆と申します」
濱音?
菜束の予感のようなものが脳内を駆け抜けた。
「パパ?」
夏実の声に、菜束が我に返った。
──お姉ちゃんのお父さん…。