君が君を好きになって。
「…夏実。久しぶり」
隆は夏実の姿を見ると眉をハの字にして悲しそうにした。
「ごめんな、辛いな」
「ううん、ううん…」
「許してな」
「──うん」
夏実は何度も頷いていた。
そして菜緒子の方をちらと見る。
笑顔。
「ママ…ありがとう」
菜緒子はその場に泣き崩れた。
何度も夏実に謝罪の言葉を投げ掛けて。
それに隆が近寄って慰める。
菜束は不思議だった。
自分が全く関係無いような、自分の家庭の話。
どうして自分はこの人の娘じゃないんだろう。
心の端で微かに苛立ちと、疑問を持って。