君が君を好きになって。

「…そんなの駄目」

「ムカつくなぁ…言っとくけど、あんたのこと可愛いなんて嘘。嘘だよ」

「…だから何か？」

「正直普通過ぎて笑えちゃう。碧なんか似合わない！絶対似合わない！」

千幸は床をダン！と蹴って菜束を睨みつける。

「告白なんかしないで…」

「何でよ」




「私だって綿貫のこと好きだもん！」



千幸が菜束の手を振り払う。

「何も知らないでしょ!?碧の悩みも！」

「知らないよ！知らないけど、でも綿貫は綿貫だから」

「知ったように言わないで！苛つく…苛つく！」

「ごめんなさい」

「…」




「でも、私…綿貫のことが好き。ごめんなさい」




菜束は頭を下げた。

千幸が息を飲む。

「何でよ…ムカつく」

「私一条さんが羨ましい」

「…？何が…」

「自分の気持ちに精一杯嘘つかない一条さんが羨ましいよ」

千幸は面喰らった表情から顔をしかめて目をそらした。

「…ウザ過ぎ」

そして、階段の向こうへ消えて行った。