トラックで輝く君を
───……
「健人、頑張って。」
「…力、入れすぎるなよ?」
「頑張って!」
同学年から激励を受け、
俺は小さく頷いてこれから走るトラックを見つめた。
今までで一番の緊張なのは、やっぱり変えられなさそうだ。
けど…どこか気持ちは楽だ。
あえて、涼平と田尾さんの結果は聞いていない。
余計なことを考えないように。
「次のレースの選手、入って。」
俺の走る時。
県大会のスゴさを、初めて全身で感じた。
今までも、県大会を走ってきたはずなのに…なんか違う。
きっと、違うのは俺の気持ち。
スタブロを合わせて、スタンバイしたところで
ふと、スタンドを見上げた。
そこには、ストップウォッチを手にしている蜜菜と隣に涼平がいた。
胸がチクリと痛む。
けれど、走っている間は俺のステージなんだ。
魅せてやる。
そう思って、ゆっくりスタブロに足をかけた。