トラックで輝く君を
バカな漫才を鑑賞していると、必ず田尾さんは俺に話題をふる。



「吉田くんの願い事は?」



ほらな。



「俺は、もっともっと記録が伸びますようにって。」



「うわ、拓馬つまんね-!
とびきり可愛い彼女が出来ますように、とか書いとけよ。」



「…涼平書けば?」



「はい、すいません。」



「涼ちゃんって、拓馬にはかなわないんだね。」





そんなことない。

どんなことで涼平に勝っても、佐藤さんは“涼ちゃん”の肩を持つんだろう?



だったら、全て負けたに等しい。





「あら、鈴木くんいいの?
このままだと吉田くんに負けっぱなしみたいだけど。」





田尾さんの言葉には、何か含みがあるように感じた。
それは、涼平も一緒のようだ。





「いつか、拓馬のこと負かしてやるさ。」





涼平は自信満々の顔で言った。

そうなる日は近い。
直感的にそう思った。



その時点で俺は負けている。





「涼ちゃんカッコいい-!」





佐藤の言葉に胸がズキッとした。

分かっているけど、やっぱり…胸は痛むんだ。





「ははっ。サンキュー。」





前は俺のほうが余裕あったはずなのに、今じゃ涼平のほうが何歩も先を行って、余裕の笑みをかましている。




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