奈落の王女に仕えしは執事
「愚問だな、ただ私はエンリを世界一平和な国にしたいだけ…そしてこの聖域を我が手にしたいだけだ…
だから死ねぇっ!!!」
剣が私の首に刺さった。
…と思ったら、執事が彼の剣を止めている。
「…逃げて、貴女が死んだら国は滅びます…!裏口から早く逃げて下され!!…もうこの国は…謀反を…」
「…っ…ごめ…なさい…」
ただ執事の真摯な瞳に、抗えなかった。…そしてこの人の言葉は、余りにも残酷で…
国は謀反…?
逃げる時に、ふと外を見た。
民が松明を持って城を眺めている。
子供は一人もいない。
だが大人はほとんど城を眺めて、数人は松明を城に投げた。
…怖かった。
けど、早く階段を降りて私は裏口のドアに来た。
ドアの外は山に繋がっている。そして運良く誰もいなく、ただ山道を動きにくい裸足の状態でネグリジェを引きずりながら走った。
火が城を消していく。
熱い…熱い。
この中には従者達が何人もいる。
…だけど、ごめんなさい…
私一人が逃げて…
こんな王女で、ごめんなさい…
もっと生きれた命を…
心が痛くて、私は目の前にあった木を胸に刺そうとした。
-お逃げ下され!
貴女が死んだら国は滅びます…
…だけど、死ねない。
怖さが私を押しつぶし、ただ地面に手をつけて泣いた。
泣けるだけ、泣き喚いた。