奈落の王女に仕えしは執事
Ⅵ好き
唇に違和感が感じた。
目を開いたらとても身近にいた執事の顔。
…私、キスされた?
「…!すいませんっ…」
ばっと、離れた。
「待って!」
部屋から足早に出ようとしたレインの服を掴み、じっと眺めた。
顔を真っ赤にしているレインとは裏腹に、私は真剣な表情で見つめる。
意外と恥ずかしがり屋なのか視線を合わせようとしない。
「…好きって、なに?」
私は、レインに聞いた。
さすがに予想もしていなかった答えに戸惑いを隠せない様子が目に映る。
「…そんな…でも、私は執事です…そのような事を…」
「執事なんて関係ない。…一回抱き締めて…?」
「…姫…!?」
やっぱりびっくりしている。
…好きとは分からないけど、胸がドキドキして…愛しいと思うのは好きって意味でしょ?
「…これは主人の命令です」
「っ、…分かり、ました」
優しく、レインは私を抱き締めてくれた。
「…これが嫌だって思うなら、私のことは好きじゃない。心地よいなら、好きということ」
「……私…」