奈落の王女に仕えしは執事
「…あんたも運が悪いねぇ!こんな嬢ちゃんに仕えたから毎日が大忙し!!一週間もたたずに死ぬことになるし、エンリの軍に見つかって逃亡?
こりゃ傑作だね!!」
「っ、黙れ!!」
火花がナイフから散った。
一目散に笑いながら受け止めるバルツは、更に笑い出す。
顎髭を撫でて、
「これでも伊達にスパイじゃないんで」
「スパイって言っても分かりやすい…本当にスパイか?」
「あんただって執事っぽくねえけどな、まぁお互い様ってことだ!!」
素早い突きが、私の肩を掠めた。視界が揺れて膝をついたが、また足を踏み出してバルツの首を狙う。
ほんのちょっとの距離で跳ね返り、つばせり合いにあった。
さすがに力不足で、こっちは一歩後ずさりしたらもう一度首を狙う。
「分かりやすいんだよ」
やはり跳ね返してきた、
心を読み、私はスキがある腹をもう一本のナイフで刺した。