奈落の王女に仕えしは執事
「ってぇ!!」
反動で、バルツはベッドの近くまで吹っ飛んだ。
私はナイフを片付けて、目の前に立ちふさがる。
「バルツ、なぜお前が」
「へっへっへ、金には抗えないってか?」
「………」
擬視して、バルツを見た。
その言葉は嘘。
こいつは何かを隠している。
「冗談…俺はな、サラサが大嫌いなんだよ。何でも成功しないエンリのなかで、堂々と同盟しやがったサラサが本気で憎かった」
「…それが、理由か?」
「…そんでよぉ、王様がサラサを潰すが為に、国民にでっち上げを吐いたんだ。どれも嘘ばかりだけどね…
…そしてサラサを潰す当日、肝心の嬢ちゃんが逃げて、まして俺の目の前に現れる!
こりゃなんて大それた現実なんだ!俺は運命の神様に選ばれたと喜んだね…」
ポツリポツリと、
バルツは呟く。
何も言えない自分が存在していた。