奈落の王女に仕えしは執事
「クク…久しいなぁ、王女よ」
「っ…エンリの…王」
そこには、憎き王が立っていた。
私たちを変えた王。
「滑稽だろう?
お前の愛しい執事が、あのバルツと死んでいく姿など」
“お前の愛しい執事が、あのバルツと死んでいく”
その言葉が頭にエンドレスしている。
バルツさんが…レインと…?
…嘘、でしょう…?
……死ぬわけない…
絶対ないはず…
だってさっきまでレインは、私の前で喋ってたから…
それからバルツさんが私を…
…え?殴ったの…?
…だましていた…のですか、
そしてレインが…?
「…っ、何故!私を殺せば良かったでしょう!!」
ただ憎しみで口が動いていた。
止まらない、
絶望感がただ胸にこみ上げるから、余りにも泣きたくなる。
「…お願い、もうやめて!……何でも、するから…」
無力な自分が憎かった。
こんな人にあの国を取られるなんて、更に悔しい。
「…なら国をよこせ…、そしてお前だけは…!」
そうやって鞘に納めた刀を取り出した。
ゆっくりゆっくり近づく足取りに、私は目を閉じて世界を捨てる。