セレブリティー・ラヴ
「…ごめん。」

私は何が起きたかよく理解できずに先輩をぼーっと見つめていました。


──…ごめん…──なんていりません。


その言葉は高鳴る鼓動と動かない体で声になりませんでした。


でも、先輩が背中を向けて歩き出した時、反射的に彼を呼び止めていました。


「徹先輩!!」


しかし、先輩は足を止めてくれません。


「先輩、徹先輩、徹様……香坂徹!!!!」


呼び捨てにビックリした先輩は私を見ました。

私は自分の口が勝手に動きました。


「謝る必要なんて、ありません。
それとも、徹先輩は私にキスした事、後悔なさったのですか??
──…私は、…嬉しかった、のに。」


言葉にして初めてわかりました。


…嬉しかった…。

─そう。
嬉しかったの。


「あずき…ごめ…」

「謝らないでくださいって言ってるじゃないですか。」


自分の口が勝手に話すから、内心、私は冷や汗をかいていました。


「……ッ…」

「……。」


口が動くのを止めるので、私は黙ってしまいました。

何て言ったらいいのでしょうか…??
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