ドローボールの行方
始まりの合図
 始めるということは終わりも経験しなくてはならない。
終わりがあることを分かっていて、物事を始めるのは愚かなのだろうか。
 彼はやればやるほど上手くなるスポーツが大好きだった。
努力が直接、実力に結び付くことを望んでいた。
才能なんか関係無い。それを証明するスポーツに出会いたかった。
 高校に入学した当初、演劇部に入部しようと考えていた。
 ――カッコいい、その動機だけで十分だ。
すぐさま入部届けをだそうと考えた。
 しかし、『部員がいなかったんですよね。
一人で演劇はさすがにキツいと感じましたよ』
演劇への道はそこで閉ざされる。
 部活動説明会があり、運動部は新入生獲得のアピールを怠らなかった。
体育館でバスケ部は実際にミニゲームを行ない、バトミントン部もスポーツの楽しさをアピールする。
しかし、ゴルフ部は違った。
「ゴルフ部は夏休み中、球拾いをしてとっても大変です。練習もキツいですが日々頑張っています。
やる気のある方を募集してます」

 アピールすることもなく、淡々とスピーチを続けるだけだ。
しかし、ゴルフという未知のスポーツに憧れた。
放課後、入部届けを部長に出す。
その時点で一時の淡い夢物語りが始まったのだ。
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