ドローボールの行方
『実際に球を打たせてもらったのですが、面白いを通り越して感動しましたね。
ああ、こんな面白いスポーツがあったんだ。って』

 最初に手にしたクラブはサンドウエッジ。
打つのが一番簡単という理由からだろう。

「打ってみ」
 自分なりのスタンスを取り上から下へと振り下ろす。
地面においてあったゴルフボールは微動しなかった。
 (あれ?)もう一度振ってみる。カスッと情け無い音を立ててボールはボテボテと転がったいった。

『ゴルフなんて簡単だろ。打つ前はそう思い込んでましたね。
なにしろ、ボールに当たらないんですよ。たかが、止まっているボールを打つだけなのに。
一日打たせてもらってゴルフのイメージが一気に覆りましたね』


 入部したその日から彼は猛練習を開始した。夜、真っ暗でボールが見えなくなるまで打った。打ち続けた。
不思議と苦痛にはならなく、楽しいという思いだけが彼を練習の鬼へと駆り立てる。
隣りで先輩が打ってるときは、スイングを食い入るように見つめていた。
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