ドローボールの行方
『とにかく、打球の弾道と強さが全く違うんですよね。
パワーの差かと思って、目茶苦茶に力を入れてスイングしても力強い球が打てない。
それどころか、空振りやチョロが増えただけでした』

 初めてコースに出たのはゴルフ部に入部して二週間後のことだった。
全九ホール、パー二十七のショートコース。それが彼のデビュー戦となった。
 その頃、ドライバーで百三十ydしか飛ばなかったので、「ドライバーを使ってもいいですか?」と先輩に訊いた。

「ドライバー? 駄目に決まってるだろ」


「けど、ドライバーで丁度良いんですよ。
六番アイアンで七十ydしか飛ばないですし」

 部長は、うーん……と少し考え込んだ後、「やっぱりダメだよ」と、却下した。

彼はゴルフを初めた当初から飛距離不足が深刻だった。
同じ時期に入部した神崎という男がいる。
飛ばす。
とにかく飛ばした。野球をやってただけあって体つきも立派だった。
自分のひょろっとした体がなんとも情け無く感じる。

 ――負けたくない。飛ばないのなら飛ばないなりのゴルフをすればいい。
開き直れるのも彼の特徴の一つでもあった。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop