ドローボールの行方

 そして、初のショートコース。結果は四十八の二十一オーバーだった。

『まだゴルフ初めたばっかりでしたから、良いのか悪いのか分からなかったんですよね。
今思うと、相当悪かったと思ってます……』

 とにかくボールが真っ直ぐ飛ばなかった。と彼は語る。ボールが左に飛んでしまうことでOBの数が半端なく多かった。

初めてコースに出た印象は『パットが意外と入らなかった』と言う。
思い通りにボールは飛んでくれない。
簡単そうで難しいゴルフがもう一つの意味で好きになっていく。
捻くれた性格の自分と酷似していた辺りだろう。
しかし、楽しいことばかりでもなかった。
まず、挨拶を強要された。
そもそも人と関わるのが嫌いで人との接触を拒み続けていた。
彼は嘲笑の対象になっていた。
挨拶もしない。協調性が無い。礼儀がなってない。
次第に練習場の従業員から嫌われていった。

『僕ね、挨拶が今でも大嫌いなんですよ。
いや、正確には嫌いになったと言うべきかな。
従業員から挨拶を強要されて、年上が大嫌いな僕にとって嫌で嫌で仕方なかったですよ。
ずっと心でもない挨拶を繰り返してましたね』
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