【短】Name





『ずっと前から好きでした!
 付き合ってください!』


屋上に呼び出して、
真っ赤になって告白したのに、
肝心の彼の返事は……






『あぁ』


の、一言だけ。




正直返事の呆気なさに、
実感なんて湧かなかったけど……


嬉しい気持ちと、安堵と、脱力感と。

いろんな気持ちが入り混ざって、
私はその場にへたり込んでしまった。


――――――――その時。




『立てるか?』


惣介はそう言って、
私に右手を差し出してくれた。

私は真っ赤な顔が見えないように、
俯いたままその手を握り返した。

だから、惣介の表情も、
よくわからなかったけど……









私が惣介の手を握ったのは、
今のところあれが最初で最後だ。




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