へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…………寝よ…」
──長い沈黙の後、ポツリとそう呟いたあたしは、フラフラと倒れ込むように部屋端にあるベッドに横たわる
ボフン、と沈んだスプリングが軋み、ブーツを脱ぐのも億劫に感じたまま、黒い天蓋カーテンのレースを見上げた。
「……メフィスト、か…」
額に腕を乗せ、今日…否、正確には"昨日"だが……昨日、一日あった事を思い浮かべる。
確かに…変な奴だった。
突然、あたしの前に現れたと思ったら、泣き出し、舐めたり……終いには事切れたように熟睡までしだす始末で、到底手に負えなかった
けれど、その反面…どこか憎めなくて、どこか少し“畏(おそ)ろしい”印象を持っていた気がした。
「…変なヤツ…‥」
思わず、そんな言葉がポロリと口をついでてしまう
それをキッカケに一度思考を中断したあたしは、気怠い疲労感でむくりと起き上がり、銃のホルダーを脚から取り外して枕元に置いた。
そして、また改めてドサリとベッドに体を横たわらせると、自分が一番寝やすい体勢を探してモゾモゾと動く
…最終的には、体の左側を下にした横向きの体勢で収まり、黙っていても自然と重くなる目蓋を閉じた。