へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


聞こえるのは、自分の安らかな呼吸音とドクドクと確実に回数を刻んでいく鼓動の音


その定期的なリズムが、まるで母親の胎内にでもいるような、不可思議な安心感をもたらす。



すると、目蓋の裏に浮かぶのは、在りし日の母の姿───…


……ではなく、何故か出会ったばかりの彼の事。



“姉さん”

自分の事をヤケに親しげに呼ぶ彼の素性は、一体何者なのだろう?



「‥…ね…む…」


けれど、それ以上の深い思考は、泥よりも深い闇の意識に落ちていく


“姉さんは、美味しそうだから”

…そう言った言葉の意味を、いつかまた会う時があったなら、是非聞いてみたいと───…


そんな事を考えながら、あたしは深い眠りの闇に引き込まれていったのだった……


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