へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
***





『    』




──…彼の名前は、何て言ったっけ?






“…どうしたの?フィア”


“おはな!"ゴート"になった人たちに、つんできた!!”


そう言って、握り締めてグチャグチャになったシロツメ草を見せるあたしに、彼は優しく微笑んでくれた



“ありがとう、フィアは優しい子だね”


頭をくしゃくしゃと撫でてくれる あの大きく温かい手




───…あたしが、この世界で誰よりも“大好き”な人だった。





“ヴァンパイア・ブラッドが、姿を現した!?”


その夜、トイレに起きたあたしが聞いたのは、そんな事を話す大人達の声



“ああ、どうやら隣の村が襲われたらしい”


“ヴァンパイア・ブラッドなんて…まさか…っ、ここ何百年と出現してないのに…!!”


“それが、ヤツらの世界もちょいと事情が変わったようで…"ブラッドの一族"同士で争いをしてるらしい”


“…覇権争いか?”


“詳しい事は分からねえ…だが、少なからずココ最近襲われるゴートの村の数が、尋常じゃないって事は確かだ”



誰かがそう言った後、部屋には突然沈黙が立ち込め、誰も口を開かなくなった。


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