へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
当時、幼かったあたしは…大人達の言っている事を、到底理解していなかった
でも…どうしようもなく悪い事が差し迫っていると言う事実だけは、何故だか認識する事が出来ていた。
“このむらも、ヴァンパイア・ブラッドにおそわれちゃうの?”
翌日、そう問い掛けてきたあたしに、彼はハッとしたような顔をした。
“みんな…しんじゃうの?”
泣きそうに顔を歪め不安な表情をするのに、彼は優しく微笑んで安心感を与えてくれる。
“大丈夫だよ。フィアは、死んでも僕が守るから”
そっと頬を撫でてくれる手が、やっぱり大きくて温かくて大好きだった。
“逃げろ!ヴァンパイアの群れが襲って来たぞ!!”
“ブラッドだ!ブラッドが混じってるぞ!!”
縦横無尽に村中を交差していく悲鳴は、すぐに血と炎の赤に塗り替えられていく
恐怖で体が固まり、思うように足が動かなかった。
あがり続ける悲鳴の道しるべは…果たして、ゴートの一族のものなのか、ヴァンパイアのものなのか
それさえも分からぬまま、あたしはひたすらに走り続けた。