へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
目指す先は、ただ一つ───…"大好き"なあの人のところへ
『 !!』
名前を、呼んだ気がした。
けれど、彼は答えなかった……否、"答える事など出来なかった"。
大きく見開かれた瞳が、綺麗な琥珀色だった彼の瞳が…汚く濁っていた。
自分に優しい響きを与えてくれるあの口元は奪われ、今はもうただの“空虚”と化していた。
『 …… ?』
いつも、自分の頭を撫でてくれるあの優しい手の平も、そこら辺のゴミと一緒に転がっていた。
『 …?』
最後に呼んだ彼の名前は、彼の上に覆い被さっている“アイツ”を振り向かせた。
──悲鳴なんて、あげられない
ただ瞳に焼き付くのは、口の周りについた血糊に、尖った牙にまとわりつく肉片、全身を汚す人間の欲の体液
“醜悪”──…それ以外に、その姿を形容する言葉が見つからなかった。
『…ごめんね』
呆然と立ちすくむあたしに、“アイツ”は呟いた。
どこまでも醜悪なのに…どこまでも澄んだ声音で、どこまでも哀しげな瞳で、言う。