へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「───…ひっ!!」
そして、気付いた頃にはもう手遅れだった。
耳朶にジワリと感じた淡い感触と生暖かい舌の動きに、あたしは声にならない悲鳴をあげて全身全霊の力で男を蹴りあげた。
…もちろん、急所を
「……ッ!?」
それに男も声にならない声をあげて、痛みに悶絶し地面に転がった。
「な…っ、な、なな何なんだお前は───ッ!?」
それにトドメを刺すように更に腹部を蹴りあげ、今度は逆に馬乗りになってソイツの首に手をかける。
「殺されたいのか!?」
「ひっ…ひぃ!ご、ごめんなさいぃぃ!!」
あたしの鬼のような形相に、男はすっかり怯え上がりガタガタと震え出した。
しかし、そんな事であたしの怒りと恥辱は収まらない
「何で突然、人の耳を舐めたあぁ!?」
みすぼらしいボロボロの服の襟元を掴み、ブンブンと揺らして怒鳴りつける。
その恐ろしいまでの剣幕に、男は言葉を失ってグジュグジュと泣きべそをかいて弁解した。
「お…っ、おお…美味しそう…だったから…」
「はぁ!?」
答えになっていないトンチンカンな返答に、あたしは思い切り眉をしかめて聞き返す。