へたれンパイア~バイオレンスな生贄~



───…"彼"は、優しかった。




『フィアは、死んでも僕が守るから』

そう言って…本当に、その言葉通りに死んだ彼


あの時、業火に逃げ惑うたくさんの命の中で、何故かたった一人だけ生き残ったあたし


何でもない…生きていても何の価値もない、たった一人のちっぽけな少女……



「‥何故……、…あたしなんだ…」

幾度となく繰り返してきたその言葉を口にして、あたしは目と鼻に侵入してくる塩辛いお湯から逃れる為に、深く俯いた。


強いシャワーの音が耳を掠め、水を含んでしっとりと重くなる髪が、まるであたしにのしかかる罪の重さみたいだった。




生き残るべきじゃ無かったのに、生きた者


生き残るべきだったのに、死んだ者



その二つの罪を見比べた時…

一体、神はどちらに罰を与えるのだろうか───…?




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