へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…寒い」
廊下に出た瞬間、またあのヒヤリとした感覚が全身を襲い、バスあがりの体を芯から震えさせた。
けれど、あんな悪夢を見たばかりの部屋には戻りたくないと感じたあたしは、自室とは反対方向に足を向けそのブーツのヒールを踏み鳴らす
誰もいない朝の廊下は、気持ちいい
「……?」
でも、あまりにも人気の無さすぎる状況に、思わず足を止めた。
……いくら、朝も明けきらぬ早朝だとは言え…こんなにも、人気がないものだっただろうか?
それを至極不可解に感じたものの、到底大した事には思えずまた目的の部屋に向かって歩を進めた。
長い廊下を渡り、巨大な大蛇の"とぐろ"のように渦巻いた螺旋の階段をひたすら上にのぼる。
カツーンカツーンと響くヒールの音が、掴んだ手すりの冷たさも相まって、より酷薄に響いた。
───…目指すは、ウェルシーの部屋
本部に呼び出されて、数日の間は留守にすると言っていたキルバッシュ
その事について、あの時は深く言及出来なかったが…果たして、副隊長のウェルシーも連れて行くのかどうか
その事を確認する為、あたしは彼の部屋を目指している。