へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「アイツ、寝てるんだろうな…」
“勝手に人の部屋に入って来んな!”
そう怒鳴られるであろう事を予感しつつも、敢えてそれを実行してみたいと言う意地悪い感情に、思わずほくそ笑みがこぼれる。
“お前は、一体どこまで性悪なんだ…!!”
はたまた、そんな声さえも聞こえて来そうで…クスクス漏れ出す忍び笑いが止められない
「アイツをからかうのは、面白いな」
本人が聞いたら、逆上して来そうなそんな言葉を口に乗せて、あたしは螺旋階段をよどみない足取りでのぼり続ける。
──このクイール討伐団・東支部の造りは、下は地下6階、上は15階までと……地に根を生やした巨大なものとなっていて、それを繋げるのは敷地内に設置された3つのエレベータかこの螺旋階段
だが、たった数時間前に“あんな事”を体験していたあたしは、もう一度その乗り物に乗る気もせず
自分の足にムチ打ち、こうしてひたすらに長い階段をのぼり続けていた。
もちろん、常日頃から自分の体を鍛え込んでいるあたしにとっては、こんなもの"へ"でもない