へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


13階にあるウェルシーの部屋まで、残り5階分とまで来たところで……あたしは不意に、階下から吹き上げてくる冷たい風に気付いた。


螺旋階段の吹き抜けから、音もなくそっと這い上がってくる冷気に、何故だかすごく嫌な予感を感じる。



「……」

けれど、たったそれだけの事で階下まで降りて行くのは骨のいる作業だったし、何よりその予感に確証が無さすぎて行動に移るには不十分だった。



…しかし、残り3階分くらいまで来た所で、やはりどうしても足を止めざる負えない程の冷たい気を感じ、静かに振り向く


吹き抜けからそのまま階下を見下ろすと、人の気配一つ見当たらない空間が、ポッカリと口を開けて待ち構えていた。



「……オカシイ」

そして、不意に小さくそう呟くと、あたしはせきを切ったように走り出した。


たった今、のぼって来たばかりの階段を二段飛ばしで駆け下りる。


遠心力で持ってかれそうな体を、手摺を掴んだ腕の力で堪えた。


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