へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


"何が?"と、問われれば…その理由を明確に答えるのは、すごく難しい。


だが、確実にこの基地内で何かが起こっている。


それだけは確かな事で、肌にビシビシと突き刺さってくる痛い程の冷気と、あまりにも静かすぎる基地内の様子に…最初から気付けなかったのが、悔やまれた。



「…こんな時に…ッ…」

チッと小さく舌打ちをしてみれば、否が応にもその苛立ちが募る。



その気配を察して姿を現さないところを見ると…やはりきっと、キルバッシュもウェルシーも、もう本部へ出掛けてしまったのだろう。


あまつさえ、こんな状況でも人っ子一人出てこない基地内の雰囲気に、尚更不信感が増した。



「……キルバッシュ…ッ、許せ…!!」


そして、普段ならば絶対に叱られるであろうその行為も、この緊急事態においては許される。


ただただ、段数飛ばしで階段を駆け下りていた無駄な動作を止め、あたしは飛び乗るようにして手すりへとジャンプした。


そして、固いブーツの底で、手すりの塗装をガリガリと剥がしながら、体重移動を駆使して滑り落ちる。


思ったより急なその角度と久方振り感覚に、あたしは一瞬ブルリと身震いしながらも、"最下層"を目指した。



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