へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


"最下に何があるか"……その可能性を頭に思い浮かべてみてから、すぐに否と首を振る。


奴の陰性反応は、クイールの厳しい検査で明白なものになっていたハズだった。


だからこそ、キルバッシュは奴の疑惑を払拭し、ヴァンパイア達の活動が困難になる夜明けと共に解放させる手筈にしていた。



「…メフィスト…!」

その名の者が、未だに敵か味方も分からぬまま、あたしは強い焦燥感だけを胸に手すりを伝い落ちて行く。


痛い程の風が頬に当たり、階下に近付くにつれて微弱ながらもその気配をより濃厚に感じ始めた。



「やはり、ヴァンパイアか…!」

奴等独特の気配に混じり、わずかに感じた血の匂いにも深く眉を寄せる。


こんなに微弱な気配ならば、きっと侵入してきたヴァンパイアも大した力の持ち主ではないハズ……

なのに、何故"人の血の匂い"がこんなに…



「……!!」


そんな疑惑にばかり気をとられていたあたしは、繊細なバランス感覚を必要とするそれの気もそぞろになっており……ガクン、と揺さぶられた体の衝撃に、受け身を取るのが精一杯だった。



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